その人の歩幅で春はやってくる
梅の花白い蒲団に包まれて
それぞれの歩幅にあわせ春は来る
皆一緒できない事も節分会
鏡台の覆いの中に桃の花
春寒のベンチぎゅうぎゅう四人掛け
声程に姿を知らない鶯
聞くまでは鶯わからぬ鳥知らず
菜の花の香りふわりと薩摩揚
梅の花一つ挟んで出す便り
菜花摘み原付バイク道路脇
ふと見れば玄関脇に土筆あり
土筆出る玄関脇の通り道
晴れの日は飛び飛びに来て雲雀鳴く
露天湯に花弁舞い落ちる夜半
三月の終いに続く真白な日
良縁は繋ぐ手次第蓮華草
チューリップ最終列車待つホーム
畑まで十分ドライブ耕運機
雀の子一羽跳ねれば一羽飛び
春眠を覚ますフランスパンの音
摘草と共に我が家へたまとぽち
春日傘揺らして進む人の波
草原の白蝶の羽うすみどり
古茶の香戻る陽気に庭仕事
香の戻る古茶戴き庭仕事
穂の印猫の額に麦の秋
水芭蕉水滴弾き透きとおる
連弾の調子揃って風涼し
町中が緑ひといろ五月尽
猫拾う夢見た夜は明け易く
若葉風木々のおしゃべり運ぶ風
鳰の子も忙しく足を動かして
紫は喫煙所跡立葵
小波もゆるりと避けて蓮浮葉
変身は真夏の夜の一大事
潤いを含んだ光梅雨の月
窓越しに声上げられず見た蛍
ヤマイダレ押し寄せて来る真夏です
夏の月夜空を待っているような
大西日部屋の四隅の綿埃
肉づきのいい身体夏ばて知らず
クロワッサンプレーンオムレツミニトマト
牛乳とトマトジュースとバリジコと
滝飛沫捉えられたら肉眼で
泣き疲れ見上げる空に流れ星
流れ星願い呟く前に去る
肉迫する試合終了秋に入る
壁の絵は右上がりにて夏終わる
グラス跡残る卓上秋暑し
猫の後ついて涼しいところへと
涼風の通る窓下猫と分け
ワイン蔵グラスハープに月明り
秋の蚊と主のいない奥座敷
平静を保つ糸切る秋の蚊よ
無花果のたわわに実る庭いつか
いつの日か無花果実る庭にすむ
猫丸く眠る天上朧月
刈られ尚地に近づいた稲の先
秋草の一輪挿しが二つ三つ
年毎に鹿垣高く里近く
毬栗当たり窓辺に人招く夜
松茸の香り椀よりこぼれ出す
運動会終わる校庭鴉二羽
長き夜時代小説もう少し
我が肩を抱きて過ごす秋の午後
家建って稲穂の波は記憶へと
喋っても話尽きずに燗冷まし
電線を跳ねて飛び立つ寒鴉
鳥達のねぐらの森も雪の中
冬日射す立ち食い蕎麦屋ホーム端
爪先はあたったまんま炬燵中
初時雨行きつ戻りつ待つ帰り
掌中に浮かぶ思い出お茶の花
霜焼けに息吹きかけておまじない
背を丸め歩く頭上の冬の月
剪定の済んだ木々から冬支度
冷蔵庫設定弱へ冬に入る
冬の海白波立てて岩襲う
冬の海心の声を聞きに行く
結び目は緩めたままの十一月
軒先に緩やかな弧の一本葱
日めくりのメモ紙増えて十二月
伝言は早送りして年の暮れ
空っ風シャッター鳴らし抜けて行く
元日は水曜辺りが丁度良い
包装を切り開けば鏡開き
暇無く立ち食いの母女正月
初旅と思えば車体光り出す
三つ先の停留所までを初旅と
初暦丸めた跡も取れ始め
囀り高く響く立春の空に
立春の空に囀り木霊する
猫丸く春の光の中にいる
春寒の日差し木立の前で折れ
縁側の猫の額に春の日が
竹籠にすらりと並ぶ竹魚達
店先の籠と竹魚を見比べて
何時からか表に出さぬ雛飾り
雛祭り女四代笑う声
三月の暗く明るい朝六時
東京の空は黄砂の黄身色に
ご開帳善光寺へと気も漫ろ
貝寄風にスカート揺れてリズム打つ
貝寄風にスカート二枚貝のよう
東京へ行ってしまった春がまた
のっぺらぼううふふと笑う四月馬鹿
チェーホフを携えお堀の花巡り
ご近所の沈丁花の香届く朝
ドーナツの穴に指差し花筏
八十八夜の風には香りとけている
口下手の一言残る萩若葉
通り過ぎる風緑色萩若葉
二羽の蝶離れて寄って消える空
新茶着く誤記の宅配便の文字
新茶着く宅配便に知らぬ名で
知らぬ名で届いた新茶卓上に
薫風が自転車漕ぐ足緩めてる
風光るシルバークレイアート展
ぼけの花いわくありげなご住職
車窓より高原幽か夏霞
早口で寿限無唱える走り梅雨
田水張る宵より始まる大合唱
ビル工事鳶の足場に燕飛ぶ
紅かなめの垣苧環の紫
待つ人のレースのショール揺れている
夏服の少年少女衿は白
柿の花大きな萼に守られて
柿の花萼のゆりかごまだ広く
空の色纏うあの人夏ショール
四分音符並べるようにさくらんぼ
六月の緑と黄金色の風
明け易し干され鴉の鳴く土塀
脳内はメビウスの輪に漆掻き
夾竹桃隙無き人になりたくて
夾竹桃隙間の多き箱に棲み
雨蛙七匹跳ねたアスファルト
紫陽花に関わり無き事住む住まぬ
足首に大暑の風を纏う夕
雑踏に紛れ蛍の舞う光
太陽が見ているだけの夏の庭
逆上がり出来ないままの夏休み
八月のイルカ逆さに水の中
草相撲肋の見える子らばかり
魂祭何時でも帰って来たらいい
番付は毎年変わる草相撲
涼風に足元くすぐられている
涼風に揺れる新聞めくる指
選挙カー虫鳴く声はかき消され
野浮忌来る笑顔の浮かぶ文字のなか
引く事も押す事も無し蚯蚓鳴く
釣舟草咲く場所が海帆を揚げる
夕焼けと曼珠沙華に染まる土手堤
夕焼けと曼珠沙華の赤土手堤
秋桜あちらこちらで我を呼ぶ
まだ青い刈田に四羽の白い鳥
鷺四羽一羽に一枚刈田あり
豊作は料理の腕を上げる素
冷凍のしめぢの香り二倍増し
レコードに針を落して秋の午後
秋夕暮鍼灸院に尋ね人
一回りまあるくなって秋の夜
もぎたての柿はどれでも甘い柿
甘柿をもいで食べてた子供です
新蕎麦の香り分からず頷いて
秋晴の午後は一人のニットカフェ
黄葉を眺めるベンチ眠る猫
掌子規のようにと柿の実を
天高く山紅に湖深く
秋深しこちら紅山黄町
門々に柊の花守り木と
守り木の柊の花門々に
瓶の底隈無く洗う秋の夜
十夜には何方か来るよな予感して
高速の音の途絶える雪の朝
炬燵より半径50センチまで
寒中のポスト不在連絡票
雪道もどんどん歩く長靴で
寒の雨いつしか視界不透明
いつまでも変わらぬ友よ冬の草
二人して咳の返事をする夜半
寒の月地上の音をすいとった
いるいない豆撒きながら口喧嘩
何処にも鬼はいないと豆を撒く
冬立ちて納戸の扉重くなり
凩に後押しされた帰り道
銀杏の葉くるくる舞って校庭へ
黄落は音をたてずにくるくるり
暮れる街枯萩照らす街路灯
風呂吹は鍋一杯に作るもの
北風に巻かれたタオル砦旗
風呂吹の白く角無くやわらかく
風呂釜は凍らぬように自動する
息白し温泉玉子の蓋開ける
独り言寒いと言えば尚寒く
寒いと言い尚寒くなる独り言
独り言寒い寒いと繰り返し
心地好い疲れの中の年の暮れ
冬凪の港に人と猫の影
二〇〇九マスクの群れの地球上
卒業は別れの曲を歌詞付きで
夕霞高く低くと寺の町
牡丹の芽人待つ時の静けさか
一人なら女は静か牡丹の芽
春泥に残る足跡大中小
桃色の吐息そこここ花の山
花冷えは仲良くなる人多くする
花冷えは人を仲良くさせるもの
川面へと枝を伸ばして花盛り
一度では用事の済まぬ春うらら
箸となり過ごすは余生落し角
汐干には幾つ穴ある満ちるまで
安売りの幟だらりと目借り時
花水木乾いた音の風作る
招き猫煙草の隣り四月尽
一片の波紋消えゆく春の宵
春日傘くるりくるくる柳橋
開演前のざわめきに似た芥子の花
夏書といい墨すり始め暮れ始め
縦書きの毛筆封書夏に入る
爽の字の人が逃げ出す五月尽
アプローチ煉瓦玉砂利薔薇の花
夏色の溶けゆくシーツ乾く間に
右に巻く豌豆の蔓子犬の尾
穀象を浮かして流す溜息も
登山道鋸草の道標
梅雨晴間アレはどうしたソレは何
地の揺れる気配の内に梅雨に入る
空色のレインシューズに蝸牛
青鬼灯貴方の嘘も信じてる
一昨年の梅酒の梅はジャムになり
砂糖水寄り道ばかりして四十路
熱帯夜ジャムるプリンタアラーム音
明易し朝刊待つ間一仕事
同じ物贈り贈られお中元
感謝の意表す一助お中元
午後三時熱風貯めるビルの群れ
何処にでも付いて行きます弁慶草
夕立過ぎ浜辺に足跡一人分
襲われた蝉気絶して遣り過す
盂蘭盆会居らぬ人らと飲み明かす
盂蘭盆会居らぬ人らに会いに行く
語らいに歩み留まる秋日傘
猫じゃらし三本生ける我が家流
地虫鳴くこの地もいつか揺れ動く
膝の猫月程丸く十三夜
家あった場所は一面猫じゃらし
目の高さ山まで続く蕎麦の花
酌み交わす理由は月見と今日もまた
息の後は顔上げ夕月夜
竜胆の蕾のままに咲き終わり
竜胆の咲くとも蕾のままのよう
金木犀探して箒星に会う
別れとは忘れた時よ七竃
花野へと行ってしまったあの人は
今宵またちちろと共に思い出す
蝋燭が消えるとちちろ鳴き始め
毛見のよに調べる人の無き時代
毛見といいつまみ食いして苦笑い
無患子のハレの日巡り合えるかな
無患子の鎧に覆われた心
固い実は強い心に無患子の
雨に濡れ紅葉のあかさ増して来る
冬の雷喉を鳴らして眠る猫
酔い醒まし朱塗りの椀の石蓴汁
初大師縁起を担ぎ買う小物
雑炊の箸の合間に香の物
大寒も晴れたら空を見て行こう
それぞれを湯たんぽにして眠る猫
目出し帽被ってみたい吹雪の日
午祭巡って市の品定め
くたくたの春菊好きの鍋始末
凍返り奥歯噛みしめ手握りしめ
税務署は通りの向こう二月尽
日脚伸ぶバスに揺られて買い物に
立冬と聞いてふるえの増す身体
踏ん張って最後の一葉紅葉散る
つぶやく変色した切干見つけ
麦蒔いて種々の気持ちも蒔いていく
種々雑多気持ち入り込む麦蒔き
籠一杯林檎紅くてすっぱくて
幼き日蜜柑を摘んだ背負い籠
あれこれと手をつけたまま霜月は
腹に猫乗せて眠るの十二月
腹の上猫に貸し寝る十二月
諸々を掃き清めてく煤払い
埋火に向い何時しか独り言
年末と言いつぎゅう詰め冷凍庫
朱袴の折り目そのまま年用意
初詣行く行かざるは空次第
手の届く範囲に置いて三が日
春時雨着物番傘下駄の音
茶話会に二言三言君子蘭
薄氷の裏道抜けて降る光
浅き春波打ち際に鳥一羽
早朝の烏ざわめく二月尽
二月尽昨日と同じ道歩く
探梅に内緒話の落し物
桃の花しぃちゃん駆ける飛び跳ねる
春の空末広がりのうかんむり
苗木市十年先の木陰買う
田楽を前にお喋り止めぬ人
喋りつつ田楽口におさめられ
子等去って消える学校山に春
今年も会えたね桜の木の下で
石鹸玉心も軽くなっていく
父母の笑顔切り取る若葉風
如何にして鮑は息し泳ぐやら
夏近し二の腕引き締めていこう
麦の秋真一文字に結ぶ口
麦の秋佇んで後歩み出す
チューリップ主が留守の庭に咲く
若葉風あの時の嘘了解す
若葉風猫の髭揺れ鼻動く
髭揺れて鼻はピクピク若葉風
茄子植えて毎日通う借り農園
疑問符の飛び交う会話夏霞
ひやざけと青菜の浸し焼き干物
卯の花の垣根鼻歌交じる朝
衣更え猫のベッドも夏仕様
ディスプレイ画面の中の熱帯魚
午前四時動き始める金魚鉢
嘴の先は何色夏の夜
老鶯に大滝さんと声かける
老鶯を大滝さんと呼んでみる
一八の花を見つけて振り返る<
一八と月命日の酒求む
シーソーは相手が要るの濃紫陽花
問い1の答え導く夕立かな
梅雨晴間出会う人には挨拶し
金亀子猫から逃れ落とす髭
図書館の入口の鉢青鬼灯
掃えどもその度戻る金亀子
猫に手を舐められたまま端居する
身づくろい念入りになる夏の宵
心太黒蜜味のない所
黒蜜の味に出会えぬ心太
初西瓜冷し中華の付け合せ
地面揺れミネラルウォーター並ぶ夏
向日葵と共に前見て歩きたい
心太貴方私を好きになる
猫尾行して涼しい場所を知る
友人と言う間柄氷水
三代が歩く参道蝉時雨
鬱憤を花火と共に打上げる
涼風の渡るホームに笑い声
汗流れ健康診断異常なし
日陰から日陰へ歩む甲虫
石塔は倒れたまんま夏終わる
秋立ちて道を尋ねる人のあり
案内を乞うても見たき寺の秋
終戦日誰も悪いと言わぬまま
八月は徐行運転臨時便
水面が一瞬揺らぐ蜻蛉舞う
鉄橋で一時停車の花火の夜
結ぶ口衣擦れの音風の盆
盆送り墓には振り返らない事
糸瓜棚茎は地面の瓶の中
秋灯火奥の細道記す地図
秋麗猫に夫々棲家あり
溜息が流れていくよ鰯雲
秋暑し小さくならぬ毛糸玉
冷やかな空気の層に包まれる
川底に光る石あり曼珠沙華
間引菜のお浸しが好きと言う娘
間引菜の根の土畑にまた戻す
昔日の家帰る夢薄原
さようなら隣りに置いて秋の暮れ
蕎麦の花山の始まる祠まで
シート敷く場所を探して草紅葉
公民館墨の香りの文化の日
トンパサの音で目覚める雪の朝
冬桜恋しい人の現れる
冬の雷魚の夢を見た夜に
新巻の切身の並ぶマーケット
雪囲い釘見えるまま雨の中
鳥の息写す霜降朝の海
炬燵出し畳の見えぬ季節来る
立冬に日に添い猫に添うてみる
我と猫この冬もまた日向追う
冬温し虚子も渡った橋渡る
葉を落とす風対峙する冬紅葉
腕組みを解いて歩く冬日和
星の夜苺ミルクに恋をする
干大根物干竿に一列に
雨の音消えて雪へと変わる夜
着膨れの波に押されて目的地
懐を猫出入りする十二月
鍋掴みとなる編みかけの手袋
悪しき事良き事となれ注連作
鬼ごっこ冬田の端まで使い切り
太平楽酒とうたたね三が日
世の倣い七種もフリーズドライ
アンテナは四方八方女正月
売初の声聞き分けて狙う品
立春に覚悟決めるよ潔く
忽然と想い固まり春来る
未来より過去の似合うと磯竈
磯竈手繰り寄せる御伽噺
明日晴れる親爺呟く猟名残
些事なれど急がば回れ二月去る
正解も誤解もなくてゆく二月
雛祭みんな少女に戻ってる
曇天に香を閉じ込めて梅まつり
ごめんなさいと言えなくてほっけ焼く
山道に雉同行と走り飛ぶ
明徹な論理も効かぬ春の風邪
来る人去る人交差花便り
何となく出かけてしまう芽吹き時
今日も又桜通りに出かけましょう
過ぎる人立ち止まる人汐まねき
一休み買い物帰りれんげ摘み
種蒔は緑の指でちょちょいのちょい
迷い無く伸ばす両の手若緑
菜種梅雨猫を相手に一遊び
訪れる人の数ほど山桜
時間まで躑躅眺める跨線橋
スキップと踊子草と猫の尾と
人眠る時は寝て待て根切虫
ペダル踏む頬に薫風受け止めて
シュレッダー梅雨入り前の一仕事
都心へと向かう駅舎に薔薇香る
夏至の夜街灯ばかり明るくて
浴衣着て不規則に鳴る下駄の音
呟きの留まるところ五月闇
百合咲いて集まるものの数あまた
年一度出会う人あり山開
券売機前渋滞の山開
明易しそろりと町も動き出す
海に行きイルカと泳ぐ夢を見る
飛ぶ秘密いまだ解らぬ甲虫
石鹸の輪郭溶けてゆく暑さ
輪郭を曖昧にする蝉時雨
朝六時時報と共に蝉時雨
鳳仙花少女に囲まれ花紅く
又明日パンと開くよ鳳仙花
心映え良き文字願い硯洗う
横長の雲の流れて秋に入る
ポストには残暑見舞の一つきり
盆の月門に人の輪話の輪
蜩の交じる会話はエンドレス
年毎に絵柄の変わる稲穂波
稲の花私はずっと此処に居る
唐黍を持ってお帰り店仕舞
二十日月伝言版の楔文字
一人だけこちら向いてる芋嵐
撫子の帯進む先人分かれ
冷ややかな空気の満ちて朝となり
蕎麦の花分けて行く一両電車
駐車場公園団地金木犀
坂の上の屋敷を覆う蔦紅葉
ベランダに団栗一つ見つけたり
鵙の贄立入禁止柵の上
茨の実鳥に誘われ迷う道
沈む陽に蔓竜胆の実は赤く
腹の上猫の眠りて冬来る
未整理の書類累々十一月
暖かい冬と言いつつ閉めるドア
冬めきて少し狭まる歩幅かな
ありがとう言えた勤労感謝の日
小春日に求める本は背白版
黒き屋根白く輝く霜の朝
終わりだわこれが最後のクリスマス
雪だいて柊は輝いている
立ち話長引かせるは落葉焚
二人して選んで歩く年の市
日本中ラッピングされクリスマス
ストーブにあたり舟こぐ爺と猫
寒椿好きは嫌いを閉じ込める
問掛も応えも目のみ寒釣は
手繋ぎのスケート幾年ぶりのこと
坪名入り生産者名一文字
大寒の窓潔く開ける人
雪女座敷童と曲がり屋と
大寒の窓潔く開ける人
其々の福わからずの鬼やらい
少年は初日に向かい仁王立ち
倍になる歩道の幅や三が日
膝に猫炬燵に蜜柑お正月
身奇麗に片付け損ね去年今年
去年今年平穏無事の積み重ね
春立ちてするりと剥ける皮一枚
凍返り空き無き医院の駐車場
鶯の声真似今日も日和好し
植木鉢除ける日を待つ物芽あり
明日起つと告げる人あり雪の果
梅の花咲きました今朝吾が庭に
巡り会いこれも人生春一番
道産のチューリップとな「もも太郎」
もも太郎チューリップにもある名前
しの字からくの字への字と白子干
つぼ菫ふるふるふるとふる雨に
抱擁も色々ありて猫の恋
狛犬の脇にくるくる風車
畑を打つ主と共に犬歩む
黄水仙咲くローズマリーの隣りにて
矢継ぎ早に出ずる言の葉揚雲雀
止まる距離遠く近くと鳥の恋
葉に沿って雨粒宙へねぢあやめ
新緑のカフェ卓上のハーブティー
合格を待つ身のごとく燕来る
夏来る思いもかけぬところから
はねはらい文字摺草の書道展
橡の花駅舎の屋根に風そよぐ
曖昧な物言いばかり夏霞
鉄線や気高く強く美しく
おもたせの葉付きの蕗の一抱え
「あの、これ。」と葉付きの蕗の一抱え
サバ缶と筍汁の切れぬ仲
周り皆夏服となる電車内
鍵束とアイスキャンディー警備員
ぽつぽつと明かり点して柚子の花
暮れる日の明かりとなりて柚子の花
一途なる土への想い七変化
十薬を鉢植えにして愛でるかな
閑古鳥鳴き始めれば雨上がる
棚田から海へ山へと青田波
雷鳴に腹上にして眠る猫
天道虫寄り道小道分れ道
夜濯ぎの音木霊して消えてゆく
夜濯ぎの音反響し消えてゆく
オルガンの音天の川より降り注ぐ
天の川パイプオルガン音の降る
卓袱台に人の集いて西瓜切る
八分の一ずつ口に初西瓜
流し台並んで立って西瓜食む
流し台並んで立って食む西瓜
均等に切り分けてみたきもの西瓜
開け放つ8月1日青い空
向日葵のブローチ付ける元気出る
軽井沢蓼科高原ハンモック
再会の花火大会勝負の日
花火師の勝負一瞬諏訪湖半
ハンモック開田安曇野上高地
猫の尾のようにゆらららハンモック
炎昼の道の端にて休む鳩
置き忘れ記憶の底に蝉時雨
吹く風はとうに秋です気がついて
水澄むと表に出る裏の顔
芋虫と真丸くなる己かな
蜻蛉舞うようにくるりん己が道
稲刈りの母ちゃんの声響く朝
乙女らは見目麗しく天高く
はいいいえ続かぬ会話秋扇
正門へ至る回廊蔦紅葉
逡巡す加減わからぬ新米に
落し水心を込めて入れる鍬
裏門に公孫樹紅葉のニ三枚
新米の加減分からず一巡り
良し悪しの根拠は無くて赤のまま
赤のまま良しも悪しも根拠無く
吾と彼の繋がり具合唐辛子
猫を抱く黄葉の庭眺めつつ
シワの入り加減整え大根干す
表札は出さず仕舞に神の留守
傘の骨オブジェとなった文化の日
外出は握り拳で寒卵
えこひいきしてはくれない雪積もる
猫と吾とお互い様の行火かな
寒の雨家無き猫に避難場所
暖かき部屋入る度拭く眼鏡
ほのあかり花瓶にうつす薮柑子
白き息白き山々青き空
三兄弟三人揃う七五三
竹林に静寂の刻冬に入る
冬来る洗濯物の重さから
小春日の鼻歌交じりに窓開ける
やわらかき言の葉の中冬来る
それぞれに順序のありて師走入る
友と会う冬木の並ぶ交差点
控えめに洗面台の冬薔薇
洗面所鏡越し見る冬薔薇
臘八会靴音たてぬ警備員
一回り小振りの物で年用意
角取れて切れ切れとなり年の暮れ
黒い服赤い手袋黒い靴
初詣氏神様へ挨拶に
同じ顔揃いて笑う三が日
掃除機を止めると梅の香りあり
駅前のタクシー乗り場桃の花
一枝に紅も白もと梅の花
錦繍の帯と衣と踏絵板
行き跳ねて戻り小躍り猫の恋
二月尽近くて遠き富士の山
福寿草三件先の庭に咲く
野遊の後押しするよ風来る
春彼岸両手に余る花束を
茅花つみ左右へ振りて歩むかな
窓開け放ち蒲公英と挨拶す
昨日より今日より明日花開く
花冷えの峠の茶屋に立つ煙
目印の連翹を右三軒目
暗闇は花散る音の聞こえそう
何事も許してしまう仔猫かな
天空に鳥舞い上がり四月尽
木蓮の花を食べたの誰ですか
里山の黄緑緑若葉色
同じ曲繰返しつつ蕗を剥く
食卓にレシピを並べ初鰹
夏野菜千切りにして大鉢へ
三株に増えて芍薬花三つ
吹く風にジャーマンアイリス添って立つ
急降下低空飛行の燕隊
五月闇好からぬ話ぽとりぽと
オブラート紫陽花色の粉薬
画廊より夏手袋の銀座かな
笑い声こぼれる窓の梅雨晴れ間
志し入道雲の高さほど
嵌め殺し窓の下茂る十薬
靴下の柄の通りの日焼け跡
指の先天道虫に貸してやり
梅雨明けて転転とする昼寝場所
茄子洗うきゅきゅと音たて水はじく
向日葵の観察日記背比べ
百合の花おしべ無くして活けこまれ
許せよと金鎚下ろす南瓜かな
秋立ちて辿る道端の色模様
調弦も精一杯に秋の蝉
朝顔の蒼の空へと伸びる道
天窓に切り取って見る花火かな
いつの日か一緒に花火大会へ
幾本の道を渡るや蕎麦の花
所在無き怒り静めて秋扇
何処かに消えた人形秋出水
孫曾孫玄孫並ぶや彼岸花
子らの声稲穂を丸く膨らませ
木犀の微かな香り乾し蒲団
今日はねと猫を相手の夜長かな
焼酎とたたみ鰯と七輪と
祀られるもの動き出す九月尽
そぞろ寒わが身を抱く両の腕
陽だまりに猫丸まりて火の恋し
焼き菓子の香り包むや蔦紅葉
紅葉散る三々五々と鳥ら散る
芋掘って根っ子も持って帰ります
四十雀実のある森に住まうかな
寒鴉爪先立ちの女学生
日脚伸ぶ廊下の隅の綿埃
単語帳繰る音ストーブ燃える音
膝よりも日向を選ぶ猫の冬
霜月の精一杯の痩せ我慢
落ち葉踏み詩人の一生辿るかな
冬ざれて通学バスの声ひそか
朱を淡くして初霜の太鼓橋
霜降りて揺らぐ空気の屋根瓦
掌に納まる鉢のシクラメン
紅白と赤と緑の師走かな
山茶花も陽当りの良き処から
言なくも満ちる幸福炉辺かな
吾の内の殻の破るる凍てし夜
木兎の丸き姿のシルエット
三が日尾のあるものの伸びやかに
私につぶやく新年の挨拶
初夢の砂時計より出る顔
いそいそをにやにやにする初電話
大小の三脚の池鳥帰る
山道の歩き易さよ猟終わる
身反らして銀の輪作るさより
春の文字書きてほぐるるわが身かな
微笑みのやわらかくなる二月尽
梅見頃快速電車通過駅
諸子釣り隠れる草の丈足らず
垣直し揃いの法被檀家衆
海越えて黄砂と共に帰れ君
爺様も懐柔される花だより
ペダル踏むワルツのリズム春の風
山藤の花穂の先に分れ道
風車白詰草を従えて
思考など論外蚕は食べ繭作る
道端の花びらの主仰ぐかな
声去って後ろの正面雪柳
煩悩は身の内に在りチューリップ
心なく揺れ揺れ揺れるひなげしは
指の先から消えてゆく夏霞
眠る猫楕円になりて夏来る
参道を登りきったら心太
川縁のアカシアの下蜂巣箱
草茂る放牧の牛寺参り
しゃがの花ごきげんようにさようなら
地と水の区別のなくてあめんぼう
下駄の音の高き参道明け易き
紫陽花と私と彼の万華鏡
通り雨燕の隣借りる軒
吾も猫も一休みなり梅雨晴間
一片の薔薇の花弁卓の上
夜の明ける大気の中のキャンプ村
眠り方人それぞれに含羞草
ハンモック結末知らぬミステリー
百日紅行き交う人のまばらかな
草刈女其々名前あるものの
花火散る一息ののち闇来る
船虫の避難訓練石の陰
花ユッカ一升瓶提げ隣り町
膨らみの程のよきパン秋来る
冷ややかに我を見つめる眼あり
知り人を遠く近くに盆踊り
姉妹ままごと遊び蓼の花
新涼のタマゴサンドとダージリン
両の手を伸ばし星見る夜長かな
栗拾い厚底靴の使い道
最初はグー彼岸花咲く土手の道
千人で歌うカルメン秋うらら
参る墓持つも持たぬも穴まどい
月明かり雑木林の影ばかり
漂うはとうもろこしの甘さかな
木犀の香とともに現れる
天高し一羽の鳥と青ばかり
漆盆粉引きの器次郎柿
やり甲斐と灯火親しむ蔵整理
夕暮れの柳落葉の石畳
知り人に気づかれぬ街そぞろ寒
ふと思い浮かぶように落ちる木の実
拡声器公孫樹紅葉を揺らしてる
そこここに語気強き文字紅葉山
早梅や気を引く素振り覚えけり
冬の月眠らぬ街を照らすかな
雪野原わたしと犬の足の跡
ストーブのまわり人垣いつの世か
カツカツと爪音たてる炬燵猫
小春日に迷うことなき蕾かな
石蕗の花言葉少なき同行者
初霜に靴底写し今日をゆく
郵便と書類の机上師走入る
欠礼の葉書次々増す寒さ
湯豆腐と七色辛子葱醤油
女房の里の味する雑煮かな
田作りの粘りに参る塗りの箸
初春の挨拶軍手長靴で
初旅と行き先知らぬバスに乗る
三代の想い様々ランドセル
春菊の茎おつまみのきんぴらに
名前無き伝言「梅が咲きました」
春の文字細く小さく見えるかな
片袖に梅の香を連れ帰る
好物の蕗味噌到く夕餉前
餌台に残る爪の跡鳥帰る
噂議する御婆の傍の沈丁花
花種の袋揺すって選ぶ人
はっきりとせぬ空からの花便り
黄水仙一輪差しある廊下
満開の桜並木で別れましょう
入学の子の背中見る親の顔
連翹に迎えられての帰宅かな
花冷えや本を携えティータイム
稲荷社の幟一色花吹雪
春日傘回す彼女の恋の歌
再会の車窓薫風散らし寿司
灯る火の微か海亀戻る
屋根の上観覧席と鯉幟
卯波立ち飲み込まれゆく彼の言葉
来店のあいさつ代わり燕鳴く
踏み切りを鼻歌で待つ五月かな
団体の横切る街の薄暑かな
亀の子ら団体戦の会議中
花びらに雨粒のせて杜若
梅雨晴間団体車両のごとき様
露草の薄紫と濃紫
ソーダ水向かい合わせのすりガラス
土地柄に添いて馴染んで七変化
アイリスや受け継ぐものの一本気
一切の濁り許さぬ溝さらへ
曲がり屋の座敷童と草いきれ
ブラインドからはみ出している大西日
明易しお喋り止めぬウィンカー
何事も無き日の終わり髪洗う
鬼祀る社のまわり夏木立
川床に袂の揺れる風ふわり
雷と囀り入れ替わる間合い
台風過生まれ変わった風受ける
何となく風の変わりて秋に入る
歩を止めて仰ぎ見る八月の空
新涼や薬缶の水の沸く時間
肌に合う人と語らう夜長かな
みぞそばの葉陰に流れ見つけたり
赤とんぼ止まれ人差し指の先
ホームより続く葡萄の実りかな
一色の空へと続く蕎麦の花
静かなる海と大地の良夜かな
毬栗の一つ二つとあるホーム
釣り上げた鰍と我の百面相
風に揺れ言葉さがして秋桜
九月尽有効期限年またぐ
ぽつぽつと銀杏拾いながらゆく
包み解く顔の綻ぶ新酒かな
曼荼羅に点す金色の紅葉山
目白鳴く小さき庭の枝渡り
豚汁の隣りは野点文化の日
集めては散らかされての落ち葉掃き
傘閉じて落ち葉に降った音を聴く
交ざりつつ銀杏落葉自己主張
歯ごたえの残る切干白きこと
膝の上猫に取られて日向ぼこ
雪降りて畑は白く道黒く
子猫鳴く次の夜には雪の降る
点々と雪残す庭小鳥来る
クリスマスツリーの形役場の灯
曖昧な形も味の海鼠かな
枯菊や昔流行った唄を聞く
寒木瓜に華やぐ通り目印に
果樹園へ足跡続く雪見舞い
滴りは氷柱となりて枯れにけり
大寒の身に受け入れる病かな
冴返る早朝の町鐘の音
蝶の落ち具合見つめる投扇興
片言の英語ばかりの春着かな
絎け台に向かふ人無く針供養
淡き春夢見ていたままの別れあり
菜の花のお浸しタイムサービス品
和菓子屋の店先種々の春便り
啓蟄やあらわれるものみな愛し
いつからか田螺の棲まぬ地となりぬ
陽光の降る浜海へ潮干狩り
柔らかき日差しの中に花の町
学籍の卒業学問の始め
鳥帰る先を眺める家路かな
裏戸口辺り土筆の背比べ
沈丁花開くを待ちて開ける窓
石楠花や峠への道右左
春昼の山菜そばと麦ご飯
一輪の樒の花の新仏
田おこしの土の匂いの空気かな
初摘みの若芽の緑色淡し
青嵐そんなお人のいた時代
薫風の通り抜け行く朱雀門
団子屋の葭簀去年と同じ場所
めまとひの術にかかりて人違い
青梅拭く父の姿を想ひつつ
薔薇色のパラソル銀座四丁目
笠かむる人のある街梅雨の朝
骨切りとコンチキチンが鱧の味
夕立と腕白坊主共に去り
時間帯重なり合うて夏の恋
短夜を貪るような寝息かな
炎天に熱き緑茶の心意気
彼の人艶かしきこと百日紅
茉莉花の香り彼との距離はかる
水滴の中に虹のかけらかな
夕涼み爪弾く三弦の小路
秋立ちて糸綴じとなる雑記帖
風呂屋まで月と並んで歩むかな
一雨の後の風には秋の素
新涼やチューインガムの包み紙
御用聞き蜩聞いて一回り
恥を知る人無き国に稲の花
ゆらりゆら花野の中に佇めば
台風に振り落とされた実りかな
栗拾う実の数かぞえたその後に
三つ四つと銀杏拾いバスを待つ
かたむける杯増える良夜かな
一房もまた一粒も葡萄なり
栗一つ五目いなりの奥の奥
帰り道黄金の稲穂茜色
薄原逢魔が時に迷い込み
それぞれに実りの秋の笑顔かな
敗れ蓮正義を騙る国に住む
古の都はいずこ鹿の声
落ち葉踏み向かう待ち合わせの場所へ
神の留守門前町の大欠伸
横顔の美しきこと雪の夜
冬の日に子供になってしまう人
水仙のように冷たくなれなくて
宣告は生きる証と冬日向
節分の豆は同じくキティ升
くもる窓拭くもの出ずる雪の湯屋
灯は薄橙の蜜柑なり
ストーブの自動点火の音ひびく
初霜や同じ笑顔の銀行員
大綿の浮遊に呼応する調
年跨ぐ神無月の回数券
鍋囲む人あるところ笑いあり
雪雲の手前に虹の橋架かる
小奇麗に生まれ変わるや霜の朝
初雪を待っていた頃あったのに
してみたきもののひとつのふゆごもり
初空に気球に花火てんこ盛り
初日の出珈琲沸かす山男
そこここに言葉こぼして去年今年
客間には余所行き顔の白障子
今時のグッズ並べて煤払い
花の数ふたつ去年のシクラメン
投げ込みの紅梅の壷仄明かり
表門始めて通る卒業日
日溜りの噂議の話題梅の花
卒業の校門出て行く光
春告げる恋の君へとチョコレート
ふわふわとうすぼんやりと山笑ふ
歓迎と惜別の駅沈丁花
春一番物欲なんて吹き飛ばせ
膝隠す丈に直して卒業す
木の芽乗せご馳走となる煮転がし
柳鮠天ぷらにてと夫の声
声の主定まらぬまま花盛り
扉から扉へ届く花便り
目覚ましの日の出を待つのちゅーりっぷ
うたた寝の爺の頭に春の蝿
菜の花の菜の花の中乳母車
日暮れ時満天星の花揺らす雨
故郷の川に踊るや鯉幟
新茶着き修行のごとく入れ始む
青嵐君に届かぬ想ひかな
金雀枝や光放ちて翳深し
更衣丈の変わらぬ帯締めて
引越しの後にも残る燕の巣
はしり梅雨着てゆく服も決まらずに
ステテコと読み間違える薄暑かな
心太黙々と食べ別れゆく
青鷺や空と水とに染められて
紅の花小指使いのDNA
梅雨晴間釣り銭籠の揺れる店
喚声は入道雲の育つ素
夏帽子傘に隠れてしまひけり
ギターの音浴衣の君になる準備
技と味どちらも勝ちの祭鱧
垂れた尾の先に亡骸油蝉
チョコかけのバナナ転がるパフェグラス
振る幅の小さくなる尾夏の猫
篭盛りのばなな提げ畦道歩む
青蒼藍八月一日の空
レントゲン胸部撮影蝉時雨
お隣りの向日葵覗く手元かな
頭上より爆音消えて秋来たる
梶の葉の形揃って並ぶ文字
朝顔に迎えられての朝帰り
淋しいと口からほろり鰯雲
七輪に待ってましたと秋刀魚焼く
風に香を振り撒いている葡萄かな
糸瓜水受け継がれゆく祖母の肌
空っぽの財布空っぽの毬栗
訪れぬ姿うつして宵闇に
秋桜に吸い取られていく笑顔
夕暮れの金木犀の灯りかな
いつかより今日が大事よ鰯雲
淋しいと口からほろり秋の夜
風にのる蜻蛉風より生れけり
毬栗の落ちて振り返らせる技
新米の感動薄き世紀末
内定と一言告げて蕎麦を刈る
鶉十鶏卵三つほぼ同じ
木賊刈るかけら拾いて文箱へ
求愛のダンスの隣り一位の実
すききらいすききらいすきすきすすき
零余子飯旅も終いの一人膳
作り手の無くした蜜柑これっきり
寒鴉優しくなれる人でなし
白い息挨拶の声通学路
影踏みの思い出冬の通学路
寒詣強くなれるといいのにね
願い事削ぎ落さるる寒詣
裏通り影の形に残る雪
血肉の争い今も義仲忌
繰り返す別れの詞初時雨
おでんやの訛り混じりの箸談義
御社の神木の上鷹一羽
跡を継ぐ人見つかった蜜柑山
霜降りて庭に小さき窪みあり
逝きし人送った後に年賀状
とりとめも無く書き綴る十日かな
流氷の上の頬杖海の豹
春遠し留守番電話続く夜
流氷に乗り頬杖の海の豹
日脚延ぶ太極拳の案内あり
日脚延ぶ猫と並んで欠伸かな
花の宴牛耳る父の便り着く
秒針を追ひては掬う水菜かな
後ろ足引きずり鳴いて猫の恋
小言などどこ吹く風の春休み
花廻り友達100人2年生
目印の楓花咲く町工場
燕来る頭上注意の札作り
鵜馴らしや我慢比べの賭け勝負
春の宵夕餉と続く徘徊へ
耳元も胸元も揺れ風光る
夏立ちて南国行くと友の文
舗装路に泥の足型田植え後
袖の開き広くなりゆく薄暑かな
麦の秋村の分校転入生
夜の香松蝉の居る木戸辺り
欠伸して向き替へ丸く猫の夏
ランドセルカバーの黄色光る梅雨
梅雨空に閉じ込められる飛行音
竹落葉兵どもの跡隠す
始まりはいつも六月忘れ傘
衣擦れの音一風の単衣かな
この夏もいつかの夏に巡り合う
晴天に梅雨明けのラッパ鳴り響く
古里へ還る夢みる熱帯夜
一つ葉や都会のビルの卓上に
兜虫おがの山より生れ来る
母衣蚊帳の内外に寝る姉妹
旧姓を呼び合う友の帰省かな
夏暖簾もう一押しの若旦那
草いきれ親方の癖弟子の癖
日記帳終いから書く夏休み
車座の宴の果ての休暇明け
新涼や生れ変われる時来たる
新涼や甲に残りし鼻緒跡
みせばやのチュチュを纏ひし姿かな
栗御強車内販売実施中
車窓より栗釜飯を所望せり
白桃の香器に移りけり
よそおひの秋へとかはる一夜かな
豊年の祝い支度の社かな
天の川探す指先照らす街
紅葉と寄木細工の宿の風呂
住み替えの願い叶わぬ帰燕かな
居待月ほろ酔い加減胡座の夫
建替の資材搬入燕去る
指切りの時効の遠き秋桜
笊の中滴残りし抜菜かな
花芙蓉勇気一枚散らしけり
朝寒や茶碗のかけら拾う指
身に入むや紅とる小指ふと止まる
澗水に柞紅葉と倒木と
ひだまりにいが栗一つもう一つ
色づきと落葉ともに並木道
奪いたき君の唇冬苺
夕刻と日暮れ親密になる冬
機械音友とする雪の降る夜
冬日向片目瞑ってたてる耳
落とし物のちの一声寒鴉
眠るよに消えて行きたし我は雪
座敷より豊穣の花団子玉
餅花のかざす火の中友の顔
地上まで螺旋描くや名残雪
知り人の無きカフェテラス冬隣
七五三一度に済ます三姉妹
芭蕉忌や国語辞典の頁繰る
芭蕉忌や広辞苑より落ちるメモ
卓上の夜食の横の胃腸薬
摩天楼吹き抜けてゆく冬将軍
木枯らしに微笑み返す老女かな
藍色の空に結び目冬桜
我が薬焼き蜜柑という不養生
湯冷めなど口実にして寄り添って
水涸れて鎮守の社現れる
挨拶も立ち止まらずの十二月
裏通り行くミニスカートのサンタ
丸まった背中の毛光る冬の猫
だんだんに小さくまとまり鏡餅
若水や内より透けてゆく身体
吹きさらす庭の主なり寒雀
雪雲の隙をくぐりて陽の光
ははの味伝える雑煮遠き郷
刻印の紅薄き歌留多かな
子ら戻り黄金週間農作業
雛菊の歌を創ってシューベルト
雛菊に愚痴を言う日の空は晴れ
雛菊に語り始める齢かな
ぎこちなく揺れるつなぐ手淡き春
さびしくてたださびしくて春なのに
春めきてのびする猫の二歩三歩
つけられた名前は好きかいぬふぐり
雪しろに軍手長靴連れさられ
トランクに島の形の猫の跡
フィルムのケースに挿したいぬふぐり
眼から心ときめく春の文字
春うらら地図を広げて旅気分
春立ちてフレンチトースト焼いてみる
木の芽吹き心の芽吹く風の吹く
膳の上畑の香菜飯かな
楓萌え六間道路人の波
朧夜の十三日の金曜日
はたいても何も出ません四月馬鹿
間柄思い巡らす日永かな
思い出の引き出し増える新学期
ちゅうりっぷ並んで咲いたまた明日
我が庭に蒲公英一つ咲きにけり
風にゆれ雨にゆれ咲く糸桜
遠足の先導車両トラクター
亀鳴くやわらわもむかし海にをり
春おぼろ英雄譚の始まりぬ
こでまりや垣根の陰のほの明り
飴と鞭効力の無き五月病
短髪にして今年の夏と対面す
父母の笑顔と向かう新茶かな
糸取の音まぼろしの資料館
大仏さん一口いかが蕨餅
日の入るや新樹の枝の間より
おひさんも大仏さんも若葉色
ペダルこぐ新樹の道を社まで
夏時間仔猫になって生きてみる
十薬の中に倒れこむ標識
草いきれ廃車を覆い尽くすかな
巻頭の写真瀑布の最新号
水面にマッチぽっぽっぽと銭荷
蜻蛉生る空へ飛びたつ日を待ちて
お使いも宿題もない夏休み
そちこちとフェンス境に立ち葵
膝小僧擦りむいた傷いつの夏
指先に付けし焼酎品定め
青柿のうちに印をつけておく
膝上15cm最後の夏
ずずっざっざく千切りキャベツ修行中
トマトのせお陽様サラダ出来上がり
向日葵も太陽ばかり見られない
御先祖の留守の合間の墓参かな
星見丘親子それぞれ流れ星
盂蘭盆会幼馴染みの袈裟姿
山の端の線路の先の蕎麦の花
止まる指想い出の中秋の宵
秋桜わたしそんなに強くない
五十年過ぎてつなぐ手敬老日
韮の花虫を集めて主役なり
年一度両の手合わす墓参り
逝きし友伝え聞く夜学のことも
虫鳴く夜貴方一途に想います
二人乗りしたき人あり葉月空
秋茜猫を誘ひて屋根の上
吹付ける雨風に稲架仁王立ち
台風の置土産窓ガラスの葉
赤蜻蛉猫を誘って飛び立ちぬ
月隠す抜き差し難き乱れ髪
鹿垣の辺りも此処も山のもの
卜占は人の世のこと竹の春
卜占も吉凶もなし竹の春
紅葉狩りサルに狩られる人の群れ
雪積もり夜が明るくなりました
張り詰めた天地の糸を雪崩切る
黙っててバレンタインの夜くらい
寒紅にクローズアップキスマーク
寒紅の流行の衣装まとうかな
山頂のパウダーシュガー雪便り
紅葉のジャケット横目に下ろす針
手鏡の裏返しまま木の葉髪
冷めぬまま御酒を供える鞴祭
まんまるの上にまんまる冬隣
極楽の池は何処に鴨渡る
北風の一吹き丸裸の庭
真正面見据え枯野に分け入らむ
隣家と窓越しの礼笹子鳴く
冬帽のボンボンはいつも赤い色
大時計振り子びくとも動かざる
反省も後悔も無し冬田道
振り切った手よりこぼるる聖夜かな
着ぶくれとことわり入れる友真顔
わが身体吹き抜ける風冬田道
「母になりました」と賀状子の写真
仕残しの順番付ける大晦日
慣れぬ足裾裏返る春着かな
仕舞われる鏡開きの布の餅
元日に宅配便の母の味
大晦日別れる切れるも今日限り
年取の準備半ばの鐘の音
その出会い大晦の夜のこと
シクラメン恋はそんなに遠くない
許さない許せないのよシクラメン
とれ高を占い揺れる磯竃
春の風邪貴方にうつす時なくて
春彼岸包みの解けぬお重箱
紅色を川面に写す柳かな
春立てぶつぶつ云うや炊飯器
春立て化粧柳は紅に
アパートの陰にもあるよ蕗のとう
花明り素顔の奥に般若をり
青饅の味噌故郷の父の作
流氷の記憶の底の鳴る響き
競漕の起こす波音知らぬ魚
降るものの透明になる二月尽
三月の空に短き髪となる
歯ごたえの三つ巴なる青饅よ
目落せば水仙いつかふくらめり
問題の先送りする春の午後
流氷に乗って行きたし北の島
流氷の音耳の中旅の床
ばあちゃんとうつらうつらの春炬燵
一滴弾けてふわり蝶々に
笑い声終いくぐもる菜種梅雨
若芝に押し付けてみるわが重さ
若芝や入るべからずの札ばかり
何事も伏して過ごすや孕み鹿
家帰るこんなん違う桜餅
若芝に我の重たさ押し付ける
春なのに春だからかな悲しいの
魚島やコップ酒持つ太き指
魚島や一升瓶下げ男行く
魚島や女房抱える一升瓶
魚島や昔語りの始まりぬ
雪柳招きて花を見せるかな
夕闇に白きツリーの辛夷かな
孕み鹿時の流れの遅きこと
朝食の玉子サンドに苺三つ
剥ぎ取った布団丸めて鯉のぼり
布団剥ぎ五月の空の下に干す
甘味屋に「始めました」と氷水
早朝にエンジン響く田植えかな
涼風にレースの揺れるティータイム
卯の花や噂話の多きこと
草笛の音色合わせて今二人
足の裏地につけてみる夏の刻
そこここの噂話の花卯木
卯の花や噂話の隠し場所
縁側の素足まぶしき浴衣かな
歌いつつ新茶の筒を開けてみる
歳三に北の都の青嵐
蝿帳のお菓子はとうに空っぽに
薬湯を冷ましてゆくや蝿入らず
涼風に揺れるレースの午後のお茶
うつむきて苺のミルクつぶす君
青田波朽ちた窓辺の夢の海
草いきれ建売住宅分譲中
スタカートレガートレガートアマリリス
胸元の開襟シャツの日焼け跡
夜振火のゆらぎに迷う目覚め時
雨蛙顔近づけて見入る顔
背中の跡なぞる今年の夏の人
夜振火に目覚めの刻を惑わせり
昼寝覚かぶるシャワーのとっておき
鉢植えの苺二つの実をつける
冷蔵庫五年の月日とどめをり
円座敷き昔若衆集うかな
妻の手に夜濯の音消へてゆく
袂振る盆踊りの輪縮まらず
とっておき午後二時間の昼寝かな
夏至過ぎて暮れゆく時の淡きこと
松落葉我踏み込めぬ領域か
足首に冷気を落す冷蔵庫
東屋と続く小道の松落葉
安売りのように鳴らすな風鈴を
炎昼の影法師だけ動いてる
旅の朝輪切りの胡瓜浮かぶ汁
街路樹の季節移りて花木槿
星月夜増えてしまった見えぬもの
蜻蛉の羽音残すアスファルト
秋暑しラングドシャーは粉々に
新涼やポケットにチョコ入れてゆく
きのこ付け大樹は昔のこととなる
モンローの笑う葭簀の洋服屋
公園に蜻蛉の学校開校中
国道の標識光る夏の果
秋暑し飛ばぬ烏はスキップす
足音と落葉舞う音風の音
盆提灯揺れる店先中華蕎麦
ビスケット篭に入れ行く花野かな
花木槿切りて始まる学期かな
好きだった歌口づさむ盆送り
混雑も土産話の盂蘭盆会
秋めきて少女乙女の恋をする
秋立ちて流行の服欲しくなり
城跡に雲の流れて秋に入る
星月夜相手のいない恋をして
蝉時雨禊のように降り注ぐ
台風も吸い寄せらるる鈍寿庵
盆踊り帰らぬ人の姿かな
緑陰の一息つけるベンチかな
蜻蛉の羽音残るアスファルト
掃き清め門茶の人待つ人もをり
白粉の揺れる頃まで待ち時間
一斉に雀飛び立つ運動会
黄金色苅田の色の格子縞
鉄塔の足元覆う蕎麦の花
どこまでもどこまでも秋青い空
空の色写して蜻蛉空に消え
空箱に葡萄の香り閉じこめる
神よりも前に戴く新酒かな
同じ曲延々続く運動会
毎年の便りは「新酒、出来ました」
揺れている白粉花に添うてみる
今年また共に越そうな渡り鳥
地芝居の出とちりにわく拍手かな
水加減定まらぬもの今年米
てっぺんの秋どこまでもどこまでも
窓の端に映る木々にも薄紅葉
天の色と共に染められ薄紅葉
鍋蓋の揺れる日増える秋深し
薄紅葉アールグレイは温かく
薄紅葉ここから山の領地なり
薄紅葉二枚いただき膳の上
煩悩を溶かしてゆくよ芋の汁
蟷螂を見つけた君に見つめられ
草紅葉ここにレールがありました
月白く山燃え残り冬に入る
大綿の漂い消ゆる門の内
山茶花の蕾残らず落ちにけり
枝はらい街になじむや冬木立
冬薔薇かわいい女になりすます
なめらかに読経の流れ時雨降る
散歩道行きつ戻りつ草紅葉
片時雨お陽様出たらおつかいに
午後二時の枯芝背中に深呼吸
冬凪のタイムポケット砂時計
木枯らしに揺れる提灯馴染み客
遠慮なく釘打つ音や十二月
街中を優しく見せる聖夜かな
霜降りて枕木のチョコレート色
かじかみて小銭転がる御縁かな
街中が優しくみえる聖夜かな
床の中障子の影の石並べ
霧吹かれ深呼吸する障子かな
凍て空にセスナ機歪んだ音残す
炬燵にて覗き見る常夏の国
寒燈の下うずくまる迷い犬
許されざる想い燃え尽きぬ榾火
竜の玉子ら集って散らばって
薄闇の榾火にうかぶ丸き背中
寒燈に誘われて入る赤ちょうちん
端近に華を持たせし竜の玉
すれ違う袂にかほる梅の花
みいちゃんの赤い鼻緒に日脚伸ぶ
蕪炊く母の少ぅし近づく夜
あの人のドア叩く音霰降る
瓦屋根コツコツ叩き霰降る
残る雪見る目静かに休息日
天上の便りかしまし霰降る
去年今年秒進分歩世紀末
今日の上に今日を重ねて去年今年
乗初のダンボの耳のはためかず
去年今年馴染んだひとと笑いかな
梅桜並びて客を選びたり
しあわせをロールキャベツに詰めて春
洗面器紅梅一枝枕許
年一度父への便りバレンタイン
殺生の始まり告げるえりを挿す
頭では解っているの春隣
カーディガン買い物篭に桃の花
さえずりに春の近さを感じけり
チョコ溶ける間につまむ桜餅
奥の院浮かび上がるや涅槃像
公家様の眉持つ子猫そろり足
春遠し歯磨き中に歯の欠ける
春近し鳥の声する六時半
硝子瓶インクの香春の闇
伸びをしてまた丸くなる子猫かな
桃一枝頭に挿して祝い舞
頭文字手帳に記す春遠し
年度末返ってこない「おいしいよ」
白魚も魚に生まれたくは無し
枕べに桃の缶詰風邪薬
春愁やG線上のアリア聞く
焼き魚花菜の浸しお吸い物
雪解けや運動靴の紐直す
奥の歯の詰め物取れて山笑ふ
鳥帰り都会へ向かう子供達
お浸しの芹と一緒に母来る
お雛様おこぼれ頂戴致します
フリージャの花束揺れて我の手に
詰め込んだ夢と一緒のランドセル
枯木立間に雪の山飾る
山の雨春一番の成せる技
春一番ミスター飲茶ここにあり
水温む和漢朗詠集を読む
卒業に別れの曲の歌詞贈る
鳥帰る回る地球はまん丸い
独り立ち荷物と一緒詰めた夢
蕗のとう天ぷら嫌い返上す
目指す先我におしえよ鳥帰る
弥生中白き帽子をかぶる木々
涅槃像ガリバー旅行記思い出し
ピアニシモマーブルケーキ春うらら
ぽわあんと桜前線通過中
校庭の桜吹雪の背負い投げ
ここいらで一服としよう余花の山
ふらここは昔話とお友達
口だけの顔と成り果て桜花散る
ふらここに乗って遠くへ行ったきり
ふらここは子供に戻るタイムマシン
我一人桜吹雪の校庭に
梅桜見分けられずに通り過ぎ
じいさんの花見は黙って酒を酌む
蚕豆や真綿の布団貸しとくれ
蚕豆や皮剥くときの笑みは何故
五月晴れグリーンアスパラにょっきにょき
卯の花腐しスキップの赤き傘
何時の間に戸口の前の蕗の束
茶髪立て少年は行く麦の秋
戸袋に巣を作られて明易し
誤った住所で届く新茶かな
麦の秋踏みとどまっている私
郭公の鳴き声響く午前五時
青梅を拭く蝶々夫人聞きながら
本日はえんどう翡翠ご飯です
荷を解けば初夏の香りがふんだんに
紫陽花や染め直したきころもあり
濁り鮒捕らえて逃がす子供居り
荷を解くや初夏の山河に包まれる
桜桃忌私はいつも一人ぼち
紫陽花の根方に眠る猫の顔
紫陽花や暖簾分けした宝物
水面が輝いている田植え時
濁り鮒高い高いは遠い街
濁り鮒進化している女達
物好きは向かひて歩む青嵐
夏の山ちどりという名覚えけり
夏空を木々の間に山歩き
梅雨晴間急いで洗濯致しましょう
その名前餌と書かれし金魚かな
金魚等の生きているふり死んだふり
指一本取られしままの昼寝かな
アカシヤの花のご飯のおままごと
指の先触れてしまった夏祭り
捨て台詞聞いてしまった木下闇
水中花プリマドンナの独壇場
青柿を落として嵐通り過ぎ
道標は墓石となるや道をしへ
半夏生尺八の音琵琶の音
トマト切るラジオ体操B.G.M.
向日葵の陰になるまで見送ろう
山越えて海へと続く夏野かな
炎天下延びる話の疎ましき
夏惜しみトマトサラダを食卓に
夏痩せに隠して恋のエピローグ
公園に子供の戻る夕立過ぎ
山越えて海へと続く草いきれ
夕立過ぎ子供の戻る広場かな
風鈴の鳴る音枯れる夕べかな
じいさんの挨拶延びる盂蘭盆会
息災に二百十日も暮れにけり
葡萄棚番犬耳を立てて寝る
緑色の絨毯に乗る蕎麦の花
秋立ちて白きもの馬鈴薯の花
掌蓮の花びらのせてをり
焼香の列延々と原爆忌
闇の中すすきの揺れる音さわり
呼ぶ声に取り残さるる赤のまま
燈火親し隣りはいつも同じ人
群れるほど心空虚なる蔓珠沙華
月ひとつ地球もひとつ酔へばよし
見送りの母と薄のおじぎかな
こおろぎの跳ね音カツとアスファルト
ぶらぶらと手に持ち歩く赤のまま
群れるほど悲しくなるや彼岸花
見透かしておいでおいでとすすきかな
今一度振り返り見る月と君
名月を闇の中から持ち上げる
燕帰る故郷二つ持つ身かな
秋茄子凹み具合の焼き加減
濁り酒じいさんに似てきたと云ふ
黄葉し校門となる大銀杏
見下ろして見上げて愛でる紅葉かな
三つ編みの少女の後の落ち葉かな
アルプスを借景にして庭紅葉
茜空黒き一筋秋燕
一瞬の紅葉のアーチハイウェイ
運動会腹を凹ませ父走る
燕去り空家の増える山の村
角皿の鰤の照り焼き祝い膳
窓越しの蜻蛉のせなにうぶ毛あり
膨らめた頬を凹ます茸飯
落葉踏みまき散らしては掃き集め
ピッと鳴るメール受信の夜長かな
何事も何人も無し秋の暮れ
合わせてるカスタネットをせきれいに
見送りて金柑三つ差し出せり
雑踏のあちこちに居る冬木かな
冬の霧地上から湯気登らせる
ためいきと銀の指輪の遠き冬
小春日や透きとおる指揺らす人
地から湯気空から霧の十一月
冬日和我が指白きままにして
木枯らしに向ひて歩む我一人
手袋は一組でよい夫婦です
通るもの通して竹瓮沼の中
文様を透かして愛でる河豚の皿
羽子板になった寅さんすましてる
爪の先黄色に染める蜜柑かな
野沢菜とケーキの並ぶクリスマス
「水餅」と受話器の向こう冴ゆる声
雪穴にやまねになって座り込む
発車ベル凍てつきしドア開かぬまま
天気良し雪は間もなく消えましょう
引力をしらしめるかにつらら落つ
月冴ゆる懐中電灯手に遊ぶ
三が日常と変わらぬ料理番
駐車場空き地少なき三日かな
ぼぅとして一月晦日暮れて行く
初詣お守り抱きすれ違う
初詣見知らぬ同士挨拶す
小正月ふらり買い物したくなり
小正月花屋店頭梅桜
小正月燃える達磨に合わせる手
幽かに香熱海梅園小正月
母の味思ひ出させる雑煮かな
家中を甘い香りにチョコ溶かす
夕餉時電話の音は湯気の中
もしもしも言えぬ電話を温める
硝子ペン一輪差しと文机
お雛様並べる顔に童女をり
固き芽の見るうららかな午後の夢
梅香に桜の蕾膨らむや
風変はり鰊売り出しセール中
回し合うノートの表紙祝卒業
東風に乗り便りを運べ郵便屋
父の手で組み立て解体雛御殿
懐中に紅梅色の名刺あり
寒燈一つだけ照らす帰り道
東風に乗り自転車通勤軽やかに
福豆と共に受け取る名刺かな
溶けゆくや凍てし心に夫の腕
涸るる声残し飛び立つ寒鴉
ランドセル背負ったまんま夢の中
山霞みとんびが4羽輪を描く
雪解けの水音雨樋つたう音
重箱に花びら落ちて春の闇
天気良し病と言ひて野に遊ぶ
箱入りと言はるる春の三十路かな
おぼろ月緑そろった野原ゆく
かくしより手を出せぬまま彼岸入る
三月の生ぬるい強風の朝
身体中満たす野遊の空気
水温みしばらく浸してしまう朝
泥の中息をひそめる蘆の角
箱の中春はいまだに眠りをり
眠いなぁ理由は一つ春だもの
野遊の空気を持って帰りたし
自転車に乗りたくなるよな春の風
猫昼寝犬昼寝する卯月かな
山里の柱に掛かる桜貝
時経ても茶摘みの唄に変はりなし
猫の子の住処となるや縁の下
おさげ髪菜の花冠揺れ動く
フィルムのケースの花瓶犬ふぐり
遠出して暮れゆく空に春の月
住宅地しだれ桜のある御堂
蝶追って鎖ぐるぐる巻きのポチ
満開の桜の下の昼寝かな
両岸の桜並木を快走す
ガラス戸の影も泳ぐや鯉のぼり
強風に竿まで踊る鯉のぼり
矢車の鳴る音高き日暮れかな
えんどうの蔓を伸ばして背比べ
金雀枝に誘われて行く旅路かな
田水張り山田の中に波戻る
夏立ちて空高く飛ぶフリスビー
去年の茶に新茶の香り戻るかな
見るものの無き道標草茂る
けぶる山けぶる家々桜桃忌
雲海とその影を見て航行す
餌をねだる親鳥よりもまあるい子
一月を待ちて芽を出す苺かな
石一つ投げてみようかあめんぼう
凛として心は錦羽抜鳥
芽の出る迄に一月我が苺
向かい合い青梅を拭く父母のよに
深呼吸する足元に草苺
「おーいお茶」叫ぶ素振りの白扇
砂糖水今日も入れたよ甲虫
短夜はただ眠るだけ一息に
やり過ごすコーヒー入る間の夕立
黒蜜の味しか知らぬ心太
手習いは夏休み無し今年こそ
かざす手に夏の太陽容赦無く
すれ違うツンツン頭麦穂波
泣き声をかき消していく花火かな
月見草訪ねる家にかざし持つ
絹糸にも上下のあるや夏蚕飼う
手の動き一拍遅れの盆踊り
青すすき風に揺られて空を掃く
大丈夫と言って夕立を走り行く
梅雨寒や恋しき人の手は遠く
麦穂波きって自動車走り去る
畑の道一直線の麦穂かな
部屋に入る家守追ひかけ夜の明ける
緑蔭で声を掛け合い一休み
ベランダに雀の来たる昼下がり
夏終わり掃かれし雲の残し言
蝉時雨浴びて涙もつたい落つ
草笛を弄ぶ間の夏の恋
背負い篭肩に程よき実りかな
花野来て珊瑚の宿る海を見る
黒髪を揺らして風は秋になり
新涼や草葉の上に虫休む
棚経の僧都の声の小さきこと
稲光山影写し里照らす
駆け登る丘は何処も花野かな
新豆腐充填豆腐は似合わない
病葉や一音もなく地に至る
手に残るもやしの髭根水引草
新豆腐手より毀れて鍋に落つ
土壁を削りし家跡すすき原
一日を泣いて笑って秋の空
窓開くる仕草の止まる秋彼岸
富士山やすすき一本あげましょう
鰯雲鏡の中に消えてゆく
あきあかね指先止まる息止める
こすもすはどんな時でも揺れており
一輪も群生するも菊ばかり
玄関にすすきの似合う夕かな
故郷の便りは秋に包まれて
散歩道風に葡萄の香りあり
実を付ける木の名判らず秋暮れる
遮断機に立ち塞がれて切れし秋
秋早き故郷からの便り来る
新豆腐豆の香りがちょと違う
台風過見知らぬ小枝落ちてをり
仲秋の名月の裏何がある
渡り鳥想いを遠く運び行け
土付きのすすき左右に振り歩く
踏み切りを通る列車に水引草
夫摘みし一輪差しのすすきかな
葡萄の香漂う道はゆっくりと
黄身色の香りのぼらせ菊茹でる
渡り鳥増える河原の羽音かな
ぶつぶつも五七五の夜長かな
紅葉山濃きも薄きも君次第
指先に染みを残すや秋なすび
たわむれに風炉の名残りの略手前
グランドを駆けた気分の体育の日
菊の花仏花のほかに覚えなく
公園のベンチ一列赤とんぼ
轟音の主失せたる鰯雲
仁王門くぐりぬければ紅葉山
渡り鳥晴れの日増える河原かな
奈良井宿時の止まるを知る紅葉
すれ違う赤き手の女烏瓜
雪雲に覆われていく心まで
ちゃぶ台が炬燵に替わる日の巡り
ビートルズ戻るを祝う感謝祭
子の為と言って買いたし千歳飴
一枚の写真に記す七五三
朝日受け四方の山々紅葉色
その先と歩む間の温かさ
逆を行く数羽もありて鴨の群れ
息白し厨に向かう僧二人
5センチの鉛筆削る冬日向
おさらいの音速くなる師走かな
おはようがマフラーの中こぼれ出づ
鴨鍋のチラシの文字が目に止まる
川縁でひなたぼっこの鴨の群れ
台所暗さ増します息白し
降り積もる雪押し包む我が心
大寒の日の出待つ空茜色
懐中の名刺に残る紅梅香
寒燈の影小さくなる毛糸玉
鳴き声は捨て台詞かな寒鴉
お年玉行く先母の鞄かな
襟足の清しき春着十五の子
元日の入日眺むる翁在り
様変わりレンジ頼りの鏡割り
しめ飾り鞄に詰めて戻る家
四囲の山元日の陽に尚白し
暖かき陽の影薄く春寒し
梅見上げ笑顔で涙こぼすひと
ふきのとう苦み楽しむ歳となり
雨音に春の足音重ね聞く
少し横向き雛を見る内裏かな
一筋の明かりの先の落ち椿
春泥を踏む靴底の温かさ
笑う山背に写真撮るハイキング
いつ咲くか問ふて桜の下歩む
春の日にセーラーの襟きらめきて
春日傘縞の着物は夢二かな
放たれて風船の旅空高く
たんぽぽの花眠る頃オフ帰り
小包は八十八夜のお茶尽くし
クロスするひこうき雲の薄暑かな
卯波寄りさえずり返す鳥の声
新緑に飛ぶ鳥低く横を過ぎ
枝豆の茹で上がる頃戻ってね
二の腕の白さまぶしき衣更え
青嵐洗濯物も吹き飛ばし
梅雨空に光こぼるる夕べかな
梅雨の間の田の草取りの忙しなさ
梅雨空と偵察ごっこの布団干し
浴衣着てはしゃぎ駆け出すズック靴
そら豆は過保護の豆と知る齢
雲間より日差しこぼるる梅雨の夕
燕の子ガードレールもなんのその
夏至の朝アルプス青く輝けり
喫茶店入り口の上燕の子
蚕豆や仰ぐ天には何を見る
子のいない公園の午後薔薇香る
子燕や前方注意ガラスあり
紫陽花の色は乙女の恋心
十薬に覆われし庭応へなし
十薬を摘みて母への土産とす
青梅を優しく包む雨ぞ降る
鳥の声消える時待つ雨蛙
紫陽花の移り行く色我が想ひ
雷の音より犬の声高し
汗流し君はどこまで行きますか
端居してすねた背中に「風呂沸いた。」
飛ばされし麦藁帽子鳥の巣に
子供等のラジオ体操夏休み
登山道人の数珠なり夏の富士
風抜けて入道雲と碧き空
夏帽子目印にして後を追ひ
汗のひく間も無く通り雨過ぎる
端居して泡のみ残るグラスかな
端居にてもう一杯と言い難く
飛ばされた麦藁帽は烏の巣
漕ぎ出す晩夏の海に人気なく
桐一葉旅も終わりの日曜日
もろこしの一粒づつに名前付け
もろこしの背丈は我をすぐに越し
長話過ごしし人に星月夜
いが栗や今宵の膳の華となり
赤蜻蛉山の端染めて夕暮れて
道の端ジジジと羽音鬼やんま
帰り道話し相手の星月夜
桐一葉風の行方を教へけり
山の端を赤く染めるや赤蜻蛉
持て余す西瓜1/16
星月夜野原の風と戯れむ
並び飛ぶ蜻蛉や空を突き抜ける
便り着き見上げる窓辺桐一葉
吹いていく風と花野と我一人
積みし本置き場所替える夜長かな
風渡りゆるやかな弧描く花野
一株のコスモス残る草刈り後
木犀の香に誘われて遠回り
ガードレールを跨ぎ行く秋出水
雨上がり葡萄の香り満ちる朝
秋出水校庭もはや泥の海
ものすべて振動すなり秋の声
笑い声聞いて色づく薄紅葉
人避けるおまじないかな添水鳴る
袋まで色付く林檎畑かな
頂の白さと紅葉ひとつ山
霧晴れて朝日の中に銀杏あり
どんぐりの埋める場所さえ街に無し
街灯の回りは遅き秋となり
吹く風と南瓜の皮の強さかな
朝六時ひこうき雲の消ゆる秋
暮れ初め鳥に代わるや秋の声
下駄の歯の繕い終わり冬に入る
坂道沿いの軒先の吊るし柿
髪切りて北風に首すくめ行く
寒風に向かう子供等赤き頬
降りるほど良き日和かな霜の朝
小春日に裸足になりて爪を切る
湯豆腐の湯気の向こうあなたがいる
坂道沿いの軒先に吊るし柿
雲一つ無き空立冬の蒼さかな
空と峰間を分かつ雪のすじ
水鳥や漂う波に溶けて行く
霜月や2枚となりてカレンダー
北風に歯をくいしばり坂登る
さざなみに身を任すかな浮寝鳥
ふくれ顔河豚と言われた幼き日
底冷えの居間に手紙と鍵一つ
ベランダの穴の縁にも雪積もる
白き月白き峰々冬木立
雲去りて穂高連山冬景色
天からの手紙の雪が届く夕
ラグビーの熱気の湯気が立ち上る
首すくめまるまって居り寒雀
凍蝶や木の葉と共に舞い飛びぬ
雪の間の日だまりで猫毛繕い
雪凍りそろりそろりとペダルこぐ
暖をとる会話は天気予報なり
水仙の蕾膨らむ日和かな
車道にて猫昼寝する三が日
凧上げに一人二人と勢揃い
橙の代わりに柚子の鏡餅
巨大なるグリーンアスパラ畝の外
雀等を蹴散らし自転車遠ざかり
座椅子の背半纏掛かる季節かな
山は雪里は快晴紅葉狩り
秋の日に父母を待ちつつケーキ焼く
布団干し蜻蛉止まりて手を休む
白き朝稲架の黄金も銀に
野沢菜を洗う湯煙冬支度
炉を開き囲みて語る人は無し
初雪にペチカの詩を口ずさむ
初雪に喚声あがる通学路
白菜の並ぶ軒下樽一つ
肩並べ枯木の小道行く日中
貯水池に鴨舞い飛びて園となす
鈍色の雲を帳に山眠る
冬枯れの日差の中に鳩の声
凍てつきてドア開かぬまま発車ベル
南瓜食み恵比寿顔なり冬至の夜